設計料の例
以下の計算例は、平成21年国土交通省告示第15号に準拠し、その『略算方法』を用いて算出したものです。
- 『略算方法とは・・』
告示第15号に基づき「区分E技術者」に換算した標準業務人・時間数を「建物類別」とその床面積の合計によって求め、「時間額人件費」を乗じて算出したものを「直接人件費(P)」として・・
報酬(設計料) = 直接人件費(P)+特別経費(R)+技術料(F)+諸経費(E)
上記の式で設計料を求めるものです。この場合の業務内容とは、「告示第15号別添1」に示す全ての業務を行なうことを前提としたものですが、依頼の条件や状況によっては、業務の一部を省略出来る場合もあります。以下の計算例では、以下のように『A・B・C』3タイプの人・時間数の低減を想定してみました。
設計
Aタイプ(100%) | 関連資料が極めて少なく、参考例もほとんどない場合など。 |
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Bタイプ(80%) | 類似の参考例や資料が豊富にある場合など。 |
Cタイプ(60%) | 参考にする設計図書の一部を修正して使用できる場合など。 |
工事監理
Aタイプ(100%) | 告示内容の全てを行なう場合。 |
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Bタイプ(80%) | 構造や設備について他に有資格の工事監理者がいたり、監理不要なものがあるなど、告示別添1にある業務の一部を行なう必要がない場合など。 |
Cタイプ(60%) | 構造や設備について他に有資格の工事監理者がいたり、監理不要なものがあるなど、告示別添1にある業務のかなりの部分を行なう必要がない場合など。 |
※ここで言う「工事監理」は監理者が常に現場にいることを前提としません。
(非常駐監理)
タイプ別設計料の算定例
一般的 2階建木造 住宅 | 用途・構造規模:専用住宅・木造2階建30坪(100m2)E区分技術者による必要業務時間 =390時間直接人件費(P)×低減率+特別経費(R)+諸経費(E)+技術料(F)=報酬(設計料) (126万円 ×100%)+0 +126万円+63万円=315万円※但し、上記の金額に次のものは含まれていません。1)建築確認手数料(公納金) 2)建築確認手続きに関する業務報酬 3)消費税 | <条件> ・建物類別:別表第15 (その他の戸建住宅) ・設計工事監理タイプ:Aタイプ(100%) ・区分E技術者の時間額 人件費 (例)3,250円/時間 ・特別経費(R):0円 ・経費(E):1.0P ・技術料(F):0.5P |
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変型3階建住宅 | 用途・構造規模:専用住宅・鉄筋コンクリート造 3階建45坪(150m2) E区分技術者による必要業務時間=1,407時間直接人件費(P)×低減率+特別経費(R)+諸経費(E)+技術料(F)=報酬(設計料) (457万円×80%)+0+255万円+109万円=729万円※但し、上記の金額に次のものは含まれていません。1)建築確認手数料(公納金) 2)建築確認手続きに関する業務報酬 3)消費税 | <条件> ・建物類別:別表第13(詳細設計及び構造計算を必要とするもの) ・設計工事監理タイプ:Bタイプ(80%) ・区分E技術者の時間額人件費 (例)3,250円/時間 ・特別経費(R):0円 ・経費(E):0.7P ・技術料(F):0.3P |
S造4階建 1階店舗 2~4階 マンション | 用途・構造規模:店舗併用共同住宅・鉄骨造4階建150坪(500m2) E区分技術者による必要業務時間=2,840時間直接人件費(P)×低減率+特別経費(R)+経費(E)+技術料(F)=報酬(設計料) (923万円×60%)+0+277万円+166万円=997万円※但し、上記の金額に次のものは含まれていません。1)建築確認手数料(公納金) 2)建築確認手続きに関する業務報酬 3)消費税 | <条件> ・建物類別:別表第6-1 ・設計工事監理タイプ:Cタイプ(60%) ・区分E技術者の時間額 人件費 (例)3,250円/時間 ・特別経費(R):0円 ・経費(E):0.5P ・技術料(F):0.3P |
RC造5階建 マンション | 用途・構造規模:共同住宅・鉄筋コンクリート造 5階建450坪(1,500m2) E区分技術者による必要業務時間=6,390時間直接人件費(P)+特別経費(R)+経費(E)+技術料(F)=報酬(設計料) (2,077万円×100%)+0+831万円+623万円=3,531万円※但し、上記の金額に次のものは含まれていません。1)建築確認手数料(公納金) 2)建築確認手続きに関する業務報酬 3)消費税 | <条件> ・建物類別:別表第6-2(分譲住宅) ・設計工事監理タイプ:Aタイプ(100%) ・区分E技術者の時間額 人件費 (例)3,250円/時間 ・特別経費(R):0円 ・経費(E):0.4P ・技術料(F):0.3P |
S造7階建 事務所ビル | 用途・構造規模:店舗事務所・鉄筋コンクリート造7階建600坪(2,000m2) E区分技術者による必要業務時間=4,830時間直接人件費(P)×低減率+特別経費(R)+経費(E)+技術料(F)=報酬(設計料) (1,570万円×80%) +0+628万円+125万円 = 2,009万円※但し、上記の金額に次のものは含まれていません。1)建築確認手数料(公納金) 2)建築確認手続きに関する業務報酬 3)消費税 | <条件> ・建物類別:別表第4-1(主たる用途が事務所などとした) ・設計工事監理タイプ:Bタイプ(80%) ・区分E技術者の日額 人件費 (例)3,250円/時間 ・特別経費(R):0円 ・経費(E):0.5P ・技術料(F):0.1P |
上記算定例は、右爛の<条件>に示された前提を基に算定した例であり、
仕事の内容や各建築士事務所の条件により設計料は異なります。
直接人件費(P) | 設計など業務にたずさわる人の給与、諸手当、賞与、退職給与、法定保険料などの人件費の一時間当たりの額に、その業務にたずさわる延べ時間数を掛けた額の合計。 |
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特別経費(R) | 出張旅費や特許使用料、その他建築主から特別の依頼に基づいて必要となる費用の合計。 |
諸経費(E) | 印刷製本や複写費、交通費など建築物の設計業務に関して直接必要となる「直接経費」と、建築士事務所を管理運営していくのに必要な人件費や研究調査費、減価償却費や通信費などの「間接経費」の合計。 |
技術料(F) | その業務において発揮される技術力や創造力、業務経験や総合企画力、情報の蓄積などの対価として支払われるもの。 |
建物類別 | 告示別添2の表による。第1類は「標準的なもの」、第2類は「複雑な設計などを必要とするもの」である。 一、物流施設 第1類:車庫、倉庫、立体駐車場等 第2類:立体倉庫、物流ターミナル等 二、生産施設 第1類:組立工場等 第2類:化学工場、薬品工場、食品工場、特殊設備を付帯する工場等 三、運動施設 第1類:体育館、武道館、スポーツジム等 第2類:屋内プール、スタジアム等 四、業務施設 第1類:事務所等 第2類:銀行、本社ビル、庁舎等 五、商業施設 第1類:店舗、料理店、スーパーマーケット等 第2類:百貨店、ショッピングセンター、ショールーム等 六、共同住宅 第1類:公営住宅、社宅、賃貸共同住宅、寄宿舎等 第2類:分譲共同住宅等 七、教育施設 第1類:幼稚園、小学校、中学校、高等学校等― 八、専門的教育・研究施設 第1類:大学、専門学校等 第2類:大学(実験施設等を有するもの)、専門学校(実験施設等を有するもの)、 研究所等 九、宿泊施設 第1類:ホテル、旅館等 第2類:ホテル(宴会場等を有するもの)、保養所等 十、医療施設 第1類:病院、診療所等 第2類:総合病院等 十一、福祉・厚生施設 第1類:保育園、老人ホーム、老人保健 施設、リハビリセンター等 第2類:多機能福祉施設等 十二、文化・交流・公益施設 第1類:公民館、集会場、コミュニティセンター等 第2類:映画館、劇場、美術館、博物館、図書館、研修所、警察署、消防署等 十三、戸建住宅(詳細設計及び構造計算を必要とするもの) 十四、戸建住宅(詳細設計を必要とするもの) 十五、その他の戸建住宅 |
区分E技術者 | ・一級建築士取得後3年未満のもの ・二級建築士取得後5年以上8年未満の業務経験があるもの ・大学卒業後5年以上相当の能力のあるもの |
時間額人件費 | 設計など業務にたずさわる人の給与、諸手当、賞与、退職給与、法定保険料などの人件費の時間当たりの額。この計算例では、社団法人日本建築士事務所連合会会報誌「アーガスアイ」2009年11月号掲載「日事連 業務・技術委員会レポート 建築士事務所の技術者人件費等について」によった。 |